「アナバシス」岩波文庫:クセノポン

古代ギリシア。ペルシャ王国に傭兵として雇われていたギリシア人一団が、突如追われる身となり、メソポタミアから遠い故郷を目指して6000キロを歩く。糧秣も乏しく、敵国のど真ん中でいつ襲われるかもしれない恐怖の中でのギリシア帰還は困難を極めるが、知恵と勇気でその困難を乗り越えていく。
そんなとにかく燃える設定のお話なのだが、これがフィクションではなく、実際に体験談として書かれているのが本書である。
もうあらすじだけでも興奮する。淡々とした文体も読みやすく、ぐいぐい引き込まれてしまう。
確かに二千年以上前の著作だが、遠い昔の話と身構えずに手に取ってほしい。
当たり前のことに悩み苦しみ、故郷の家族に思い焦がれ、迷いの中で戦う、我々とそう変わらない人間たちがそこにいるのを見出せるはずだ。
高崎立郎(ジュンク堂書店高松店 店長)