「独ソ戦」岩波新書:大木毅

不謹慎極まりないことを書くが、戦争は面白い。戦車は無骨でかっこいいし、戦闘機はセクシーだ。
兵器も随分魅力的だが、戦争それ自体も大変興味深い。そして「独ソ戦」は最高に面白い読み物だ。さらに付け加えるなら、最高に気が滅入る読み物でもある。
何しろ戦死者数が桁違いだ。ソ連軍だけでも518万人。地獄。むごたらしさのスケールが大き過ぎる。
戦争について学ぶことは、地獄はどうやって現実化するのか、その失敗の検証を行うことだ。決して一人ないしは数名の権力者に責任を転嫁してはならない。この本は様々な側面からそれを訴えかけてくる。そして導き出されることは、平時だろうと戦争は常にアクチュアルで、我々は直接間接を問わず加担しているという事実だ。
戦争は面白い。なぜならそれはどんなに頑張っても誤謬を避けられない「人間」と不可分の領域であり、過去の戦争の悲惨さすべてが現在を生きる我々の汚点、未来まで続く我々の愚かしさ、まさにそのものであるからだ。
高崎立郎(ジュンク堂書店高松店 店長)