脳の中の幽霊

「脳の中の幽霊」

著者:V.S.ラマチャンド


失ったはずの手足を痛いと感じてしまう症状を幻肢痛と呼ぶ。

英語にするとファントムペイン。

中二病を引きずっている私の奥底がどことなく喜ぶ響きだ。


本書は、そんな幻肢痛など著者が臨床で触れた不思議な症状の各種を追いながら、

人間の脳の仕組みに迫っていくという読み物である。

とにかく実例が多い。

手足の損傷が脳に与える影響はもちろん、脳の損傷が人間の認識にどういった変化をもたらすのかが様々な症例として読者に提供される。

「次はどんな話が来るのか」でずっと興味が持続する。


そうして読み終わった後に残るのは、私たちがいかに情報をつぎはぎつぎはぎして感覚を形成しているかというよるべなさだ。

とはいえそんなよるべなさによって沸き起こるのは、不安や心細さというより「この感覚の正体は何か」「この認識って不変のものなのか」という問いの方が多い。


結局脳が脳に問うているだけなので答えは決して出ないのだけれど、自分の感覚や認識そのものを疑って、その結果迷いの多い生活を送るのは、それはそれで自由な人間のあり方のような気がする。


そんな自由の獲得のためにこうして本を読むのだったな、と特に思える本なのだ。

というわけで、高頻度でこの本は私のリュックの中に入っている。

高崎立郎(ジュンク堂書店高松店 店長)

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