「弓と禅」
著者:オイゲン・ヘリゲル

とても短い読みものだ。
ドイツ人哲学者である著者が日本での滞在中に弓道へ入門し、
「弓を射る」というただそれのみを体得していく過程を綴った本である。
故スティーブ・ジョブズが愛読していたということでもよく知られている。
ドイツ人の目で描かれた弓道に「なんと奥が深いものか」と感激すると同時に、
本当は自分とは関係のないことなのかもしれないけれど、
「日本」のことを「外国」の人が受け入れ、
愛してもらえたのだという実感もわいてなんだか嬉しくなる。
さらに、現代日本が振り捨ててきてしまったある種の
「精神性と身体感覚の回路」というものがここに記録されており、
眠っていた鉱脈を掘り当てたかのような興奮も味わえる。
無性に弓道を習いたくなる一冊。
高崎立郎(ジュンク堂書店高松店 店長)